開催中の展覧会情報

平成29年 春季展

古田織部と慶長年間のかぶき者

平成29年1月21日〔土〕~ 5月14日〔日〕
※会期中、展示品を一部入れ替えます。
前期展示=1月21日〔土〕~3月21日〔火〕
後期展示=3月22日〔水〕~5月14日〔日〕
開館時間=9:30~17:30(入館は17:10まで)
休館日=会期中無休
後 援=京都新聞

 江戸初期の慶長年間(1596-1615)、京ではかぶき(傾き)者(いたずら者)の文化が一世を風靡していました。なかでも、「かぶき手の第一」(『当代記』)といわれたのが、織田信長の甥・織田左門頼長(道八)です。また、公家の世界では、「天下無双」の美男と称され、ファッションリーダーでもあった猪熊少将教利、彼と親しかった烏丸光広などの若い公家たちの行動が「猪熊事件」へと発展します。さらに、「天下一」の茶人だった古田織部が好んだ、奇抜で大胆な意匠の茶器や斬新な取り合わせも、数寄の世界でかぶきの精神を表現したものといえるでしょう。本展では、織部好みの茶器や刀、織田頼長の書状、猪熊事件に連座した公家衆の直筆短冊などの品を通して、かぶいた武士・公家衆の人物像を探ります。

古田織部と慶長年間のかぶき者
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今回の展示会の見どころ

“かぶき者”No1は、前田慶次ではなく織田信長の甥頼長(道八)だった! 当時、一番のかぶき者(徒者(いたずらもの))とうたわれた織田頼長の自作茶杓・茶器、書状3点等を展示します。

古田織部は自分の好みの茶器を、美濃のほかに駿河(静岡)でも焼かせていた! 文政十年刊行の『茶器名物図彙』(草間直方著)には、初代有来(うらい)新兵衛についての記述があり、「初名を十蔵といい、駿府(駿河)土にて作った茶入に十蔵の陶印を使用し家康に献上し賞賛を受けた」とあります。今回の展示作品は、織部が制定した「瀬戸十作」の一人で、京の貿易商・初代有来新兵衛が駿河の土で作ったという、その織部焼茶入。当時、陶器に作者銘を入れるのは「V」「L」などの記号でしたが、これは日本で最古の作者銘が底に漢字で入れられています。

「光源氏」になぞらえた京のファッションリーダー猪熊少将の「猪熊様」と言われた髪型をついに解明! 「かぶき公家供揃図」には、月代(さかやき)を大きく剃った大額(おおひたい)に茶筅髷(まげ)、襟足を伸ばして立てるという異風の髪型の公家が描かれているが、これが「猪熊様(よう)」と推定されます。

古田織部好みの刀の地紋、初公開! 『駿府御分物帳』に記載された、織部の遺品「西蓮(さいれん)」(鎌倉時代後期)と同工の太刀を展示。躍動感ある大板目(おおいため)肌は必見です。

ごあいさつ

 江戸時代初期の慶長年間(1596~1615)、「かぶき踊り」の出雲阿国が活躍した時代、京には荊組・皮袴組というかぶき者、徒者が充満していました。彼らは長いひげ・キセル・長大な刀に象徴される、派手で奇矯ないでたちや、自らの武勇を誇示する粗暴なふるまいを好みました。
 なかでも、織田信長の甥で茶人織田有楽斎の嫡男であった織田左門頼長は、「かぶき手の第一なり」(『当代記』)と称されていました。
 また、猪熊少将教利は、「天下無双といはるる程美男」の公家で、ファッションリーダーでもありました。しかし、慶長14年(1609)7月、教利が宮中の官女と公家の密通を手引きしたことが発覚し、後陽成天皇の怒りに触れて処刑されます。この密通事件は、首謀者教利の名をとって「猪熊事件」と呼ばれます。猪熊事件で連座した公家衆には、教利と親しかった烏丸光広らがいます。また頼長も、教利の逃亡を助けたとして罰せられています。
 茶の湯の世界でいえば、「天下一」の茶人だった古田織部は、奇抜で大胆な意匠を好みましたが、これも数寄の世界でかぶきの精神を表現したものといえるでしょう。本展では、織部好みの茶道具や、織田頼長(道八)の書状、猪熊事件に連座した公家衆の直筆短冊などの品を通して、かぶき者の生き様を探ります。

展示品目録

古田織部
  No 作品名 日付・宛先・銘 作 者 箱書・伝来等 制作年代
  1 書 状 慶長十三年(1608)七月二十日付・大野(修理)治長宛 古田織部(1543~1615)筆   江戸時代初期
  2 薩摩肩衝茶入       江戸時代初期
  3 織部黒茶碗       江戸時代初期
  4 (駿府焼)織部肩衝茶入 銘「円扇」 初代有来新兵衛(十蔵)造 島津家伝来/小堀権十郎箱 江戸時代初期
  5 黒織部茶碗     京都市考古資料館 蔵 江戸時代初期
  6 織部肩衝耳付茶入 銘「雨なだれ」     江戸時代初期
  7 織部撫肩茶入 銘「提灯」   刈山宗払箱 江戸時代初期
  8 織部肩衝三角茶入       江戸時代初期
織田頼長
9 采女 かぶき踊り図 「歌舞伎図巻」下巻   徳川美術館 蔵 江戸時代初期
10 かぶき者 けんか図 「豊国祭礼図屏風」右隻6扇中部 岩佐又兵衛(1578~1650)筆 徳川美術館 蔵 江戸時代初期
  11 書 状 (年未詳)十一日付・里村紹巴宛 織田頼長(1582~1620)筆   江戸時代初期
  12 書 状 (年月未詳)卯月六日付 織田頼長 筆   江戸時代初期
  13 書 状 (年未詳)廿九日付 織田道八(頼長)筆 古筆了任極札 江戸時代初期
  14 竹茶杓   織田道八 作 共筒・覚々斎宗左・惺斎宗左箱・古筆了信極札 江戸時代初期
  15 美濃焼(青織部・灰釉・鉄釉)煙管     五本 江戸時代初期
  16 蘭蒔絵 潤塗煙管       江戸時代前中期
  17 竹茶杓   織田道八 作 (8代)織田信恭箱/高家旗本織田家(貞置系)伝来 江戸時代初期
  18 織田道八(頼長)歌入 金輪寺茶器     片桐石州箱 江戸時代前期
  19 手造茶碗   織田道八 作   江戸時代初期
  20 紺糸威朱漆塗総髪形兜     半頬付 江戸時代初期
古田織部好みの刀
  21 脇 差 銘「肥後大掾下坂」(文禄~慶長年間) 下坂市左衛門(初代越前康継) 特別保存刀剣 桃山~江戸時代初期
  22 太 刀 (摺上)無銘 西 蓮 特別保存刀剣 鎌倉時代後期
  23 備前 袴腰三足花入       江戸時代初期
  24 美濃伊賀 捻貫三角花入       江戸時代初期
  25 伊賀耳付水指       江戸時代初期
  26 古八代 三島綿毛文耳付水指       江戸時代前期
  27 青織部三つ盛角形向付     京都市考古資料館 蔵 江戸時代初期
  28 青織部網干形向付     京都市考古資料館 蔵 江戸時代初期
  29 青織部網干形向付     京都市考古資料館 蔵 江戸時代初期
  30 鳴海織部向付     京都市考古資料館 蔵 江戸時代初期
  31 青織部千鳥形向付     京都市考古資料館 蔵 江戸時代初期
  32 赤織部誰袖形向付     京都市考古資料館 蔵 江戸時代初期
  33 青織部剣先口深向付       江戸時代初期
  34 志野織部扇形深向付     京都市考古資料館 蔵 江戸時代初期
猪熊教利と猪熊事件
  35 三字一行物 「思無邪」 後陽成天皇(1571~1617)筆   江戸時代初期
  36 かぶき公家 供揃図       江戸時代初期
37 和歌短冊 「夏雨」 猪熊教利(1583~1609)筆 日永可敬極札/岸和田市郷土資料館 蔵 江戸時代初期
猪熊教利の父・兄弟
38 和歌懐紙 「春日同詠遐齢如松」 四辻季満(1566~1608)筆   江戸時代初期
39 和歌小色紙 「おくやまの」 四辻季継(1581~1639)筆 川勝宗久極札 江戸時代前期
40 和歌短冊 「早梅」 高倉(薮)嗣良(1593~1653)筆   江戸時代前期
41 表八句 断簡 「賦山何連歌」 曼殊院宮良恕法親王(東)・高倉(薮)嗣良・甘露寺時長・勧修寺経広・岩倉具起・覚阿上人他   江戸時代前期
  42 和歌短冊 「沢夏草」 四辻公遠(1540~1595)筆 京古筆家極札 桃山時代
43 和歌短冊 「瀬夏祓」 山科言経(1543~1611)筆 二代朝倉茂入極札 江戸時代初期
44 和歌懐紙 「詠花洛月」 山科言経 筆   江戸時代初期
猪熊事件連座の若公家衆
45 和歌懐紙 「春日詠花色映月」 烏丸光広(1579~1638)筆   江戸時代初期
46 和歌懐紙 「林葉漸紅」「雲浮野水」 烏丸光広 筆   江戸時代初期
  47 烏丸光広好 吉野絵 錫棗       江戸時代前期
48 和歌短冊 「明暮に」 花山院忠長(1588~1662)筆 古筆了栄極札 江戸時代初期
49 和歌短冊 「ぬれてほす」 花山院忠長 筆 朝倉茂入極札 江戸時代初期
50 書 状 (年未詳)七月二十九日付・津軽信義宛 花山院忠長 筆   江戸時代前期
51 和歌短冊 「湖上花」 飛鳥井雅賢(1585~1626)筆   江戸時代初期
52 和歌短冊 「暁神祇」 難波宗勝(1587~1651)筆   江戸時代初期
53 和歌短冊 「花を散さぬ風」 難波宗勝 筆 藤本了因極札 江戸時代初期
54 和歌短冊 「聞恋」 飛鳥井雅胤(難波宗勝)筆 京古筆家極札 江戸時代前期
55 和歌短冊 「玉嶋河」 飛鳥井雅宣(難波宗勝)筆   江戸時代前期
猪熊事件連座の女官の父
56 和歌懐紙 「春日同詠鶯是万春友」 広橋兼勝(1558~1623)筆   江戸時代初期
57 和歌短冊 「梅留客」 広橋兼勝 筆 京古筆家極札 江戸時代初期
58 和歌短冊 「開路雪」 中院通勝(1556~1610)筆   江戸時代初期
59 和歌短冊 「初冬暁」 水無瀬氏成(1571~1644)筆   江戸時代前期
※ □は前期、○は後期展示、※はパネル展示。